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50cc on Shibuya ヒストリー/思い出 ヒストリー/思い出

■50cc on Shibuya■は、アップルユーザーグループ「NewtonJapan」の、1997年関東忘年会の案内用として作成され、当時その関係者にだけ配られたNewtonBookに掲載された文章です。
ハードボイルド小説の形式をとりながら、渋谷駅からお店までの道案内をする画期的なアイデアで、作者の代表作の一つと言われています。

ご要望により全文を掲載しました、どうぞお楽しみください。

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若者の街と化してしまった渋谷は、どうも俺を異端児として、素直に受け止めてくれないらしい。本当はおまえ達がアウトサイダーなのにと思うのは、既に自分が立派な大人になった、いや、歳をとった証拠なのかも知れない。

渋谷の駅をハチ公口に出る。忠犬と言うだけあって、いつまでもそこで待っている。俺と同じ様な気持ちで若いやつを眺めているんだろうか、彼を横目で見ながら、正面のスクランブル交差点を目指して歩いた。そういえば日本で最初にスクランブルになったのはここだったな。メモには「渋谷区宇田川町13-4(03-3476-6788)」とある。目的の場所に行き着くためには、幾つかのルートが有るが、久々の渋谷だ、一番クールな道を行こう。

交差点を斜めに横切り、渋谷センター街と書かれた、ゲートを潜る。左右にジャンクフードとプリクラの溢れかえったその通りで、他人をよける能力の欠如した奴らとぶつからずに歩くのは、俺の特技の一つだ。

右に曲がれる通りを二つ過ぎ、三つ目の角を右に曲がり、井の頭通りを横切って、正面のスペイン坂へと向かう。昔、スペイン料理の店が有ったために付いたその名前だが、どうも今の坂は昔に比べるとなだらかなに変わっているように思える。待ち合わせの店はこのスペイン坂から少し入ったビルだと言う。坂を上りきってしまうと、もちろん、PARCO Part1とPart3の間へ出てしまう。

井の頭通りを渡る時、背中で妙な気配を感じた。歩道に上がるとき、振り返らず正面のガラスの反射で背後を確認してみた。が、相変わらずの週末の若者達の姿が有るだけだ。そのまま速度を落さずにスペイン坂へと入って行った。ただ、こういう時の俺の勘は良く当たる。本来ならその時気付くべきだった、視界をかすめた井の頭通りの原付の男に...。

坂の中程で、登っていく女子高生を目で追いながら、正面だけを見ていたら、見過ごしてしまうかも知れない左に、袋小路のような空間があった。その袋小路の奥まで進んで、右手のステップを上がると細い通路があり、奥に、まるでちょっと洋風な家の入り口のような小さなドアがあった。元は住宅として使用していたビルの面影が残っている。

店は「炙家」と書いて「あぶりや」と読む、「炙家(あぶりや)クッチーナ」だ。入れ替わりが速い都会の店は、フランス料理店が中国雑貨店に変わってしまう様な、節操が無い変貌が行われる。街はその都度、一瞬新装開店の装いを見せるが、すぐにあたかも初めからそこに有ったように、いつもの風景として誰も気には留めなくなる。俺はドアにかけた右手内側のリストウオッチをちらっと見て、「19:00」より少し早いのを確認して暗い店内に入った。

案内されたのは2Fの座敷の様な部屋だった。4卓あるテーブルの3つは既に予約が入っているらしい。空いている席に座った俺は、アーリーのロックをダブルで頼んだ。

どうもおかしい、何かが変だ。気が付くと予約席には人が集まり始めている。ただ、とても同じグループで括る事のできない人間が集まっている事に、俺は、薄すら汗をかいた掌を、グラスに押し当てた。俺の相手はまだ来ない。

どうもおかしい、何かが変だ。心の中に警報が続いた。そのグループは手に手に黒い何かを持ち、暗い店内にあって、多くのそれはぼーっと緑色に光っている....そこに最後の予約者、黄色い本を小脇に抱えた、奴が到着した。今思えば、それは先ほどの原付の男だった。

「Basukeさん遅いよー」
「いやいや、どうもどうも(笑)」


【ゴジュッシーシーオンシブヤ】


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2002/5/23更新
2002/3/6 登録
3506クリック/ 3回更新
感想
02/3/6 いいぬま  たしかNewton Japan のWEBで連載もあったと思うけど車田正美状態になっていたような...
某フォーラムマネジャー  これには感動しました。ライターとしてのMさんの才能に感服致しました。
02/3/7 バスケ  いまだにうちの2100には入ってますよ。これと「あつこの一人旅」。
7thHeaven  私自身がどこかにしまって見つかりません(^^;今度頂ければと思います。
02/4/2 7thHeaven  無事呑み会でいただきました、ありがとうございます。
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